防衛省と自衛隊の関係について
「防衛省」のホームページを探してみると「防衛省・自衛隊」として出てきます。つまりは防衛省と自衛隊は一体の組織ということです。
ホームページ掲載された組織図は以下です(出展:防衛白書平成28年度版)
これを見ると、防衛省のトップである防衛大臣の下に陸海空の自衛隊が配されており、つまり防衛省のトップが自衛隊のトップということになります。
ただ、防衛省の組織は「自衛隊のみ」ではなく、他にも大学や研究所などいくつかの組織があります。これらの職員は、自衛隊と同じ活動をするわけではありません。かいつまんで言えば、防衛省が事務方を、自衛隊が実際の活動を担当するということでしょうか。
さて、自衛隊の主な任務は、日本の防衛、災害救援、国連平和維持活動など安全保障環境の改善活動などです。
防衛省の前身・防衛庁は内閣府の外局だったので、何をするにも内閣府の許可が必要でしたが、「省」に昇格してからは、防衛省と自衛隊の連携がスムーズになっています。もっとも、治安出動や防衛出動は首相が命令するルールで、シビリアン・コントロールが機能する体制であることに変わりありません。
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航空自衛隊の働きや戦力
核ミサイルで恫喝する北朝鮮の脅威が高まる中、航空自衛隊は防衛の緒戦を担う要となります。主な任務は、日本領空の防衛・警備、災害救援などです。
航空自衛隊といえば、領空侵犯に対するスクランブル発進が有名です。全国29か所のレーダーサイトが24時間態勢で監視、レーダーに映りにくい低空侵入には早期警戒機が飛行し監視します。国籍不明機を感知すれば、全国8か所の配備基地から急行する態勢です。
航空自衛隊にふれあえる場として、基地開放や航空祭は多くのファンに親しまれています。航空自衛隊の華・ブルーインパルスの展示飛行(アクロバット飛行)はとくに大人気で、公式サイトでスケジュールをチェックできます。航空自衛隊のホームページ=リンク
海上自衛隊の役割や戦力
日本周辺の洋上での活動が有名ですが、海上自衛隊は商船やタンカーを護衛し、日本の海の生命線を守ることも重要な任務です。さらに、港や海峡など陸と接する海域の防衛も担当しています。
海上自衛隊といえば、イージス護衛艦が有名です。これはイージスシステムを搭載した護衛艦で、128以上の目標を同時に補足・追尾・対処できます。海洋進出を進めたい中国やロシアには、地政学的に日本の存在が足かせになっていることは間違いないでしょう。
海上自衛隊との接点として、音楽隊コンサートや艦艇一般公開などのイベントが人気です。動画サイトも人気があり、一般には知られていない活動内容の一端を気軽に垣間見ることができる趣向です。海上自衛隊のホームページ=リンク
陸上自衛隊の管区やレンジャー部隊
自衛隊の中で最大規模の陸上自衛隊は、全国を5つの管区に分け、方面隊という地域を防衛する大部隊を置いています。日本の防衛、災害救援が主な任務で、東日本大震災における救援活動や自衛隊のおにぎり・野外風呂で人心地ついた被災者の様子が報道され、今でも語り草になっています。
陸上自衛隊の活動の一端は、イベントで接することができます。富士総合火力演習はとくに大人気のイベントで、首相も臨席する観閲式は3年に1度開催されます。
陸上自衛隊の精鋭・レンジャーは、超ハードな訓練課程を修了した隊員のみがレンジャーを名乗ることができます。レンジャー徽章は有資格者だけが着用することができ、陸上自衛隊員の憧れの的なのです。陸上自衛隊のホームページ=リンク
自衛隊の戦力とは?
災害救助などでも大活躍する自衛隊ですが、いろいろな自衛装備を備え、その戦力もどれくらいなのか気になるところです。
もちろん、機密事項にあたる情報もあるので、そのすべてが詳らかにされているわけではありませんが、リリースされている情報や書籍などからそれをうかがい知ることはできます。わりとわかりやすくまとまっているのが「ビジュアルで分かる自衛隊用語辞典(フタバシャの大百科)」や「こんなにスゴイ! 日本のレスキュー隊 永久保存版(竹書房)」などの著者としても知られる菊池雅之氏の手による「自衛隊の戦力―各国との比較 (メディアックスMOOK)」です。
自衛隊と各国の主要兵器の比較やBMD(弾道ミサイル防衛)についての記述など、現在の自衛隊のもっている戦力がわかりやすく解説されています。詳細はこちら=リンク
下のキャプチャー画像からもリンクしています。
自衛隊の人数について
自衛隊の人数は、陸海空あわせて25万人弱に達します。この約25万人とは員数のことで、現員は22万人超で推移し、充足率は90%超の状況が続き、人数はつねに定員未満となっています。
自衛隊は圧倒的に男性優位とみられているようですが、女性の存在も無視できないものがあります。女性の人数は陸海空あわせ13000人超で推移していて、震災や土砂崩れなどの災害派遣などで、広く認知されるまでになっています。
自衛隊には予備自衛官の制度もあり、人数は現員で即応予備自衛官4000人超、予備自衛官3万人超となっていますが、近年は減少傾向にあります。ほかにいわゆる背広組として、事務官等2万人超、書記官等600人超も任務に励んでいます。
自衛隊の実力は過小評価されている?
なぜか日本のマスコミは、自衛隊の実力を過小評価したがっているようですが、海外では高い評価を与えられることが多いのです。とくに海軍(海上自衛隊)は、アジアNo.1などと、海外メディアも一目置いている模様です。
より信頼できるデータとして、「Global Firepower」というアメリカの軍事力評価機関のランキングによると、自衛隊の実力はアメリカやロシアに次いで、世界第7位とあります。1〜6位がすべて核保有国であることを考慮すると、自衛隊の実力は世界有数と結論できます。
自衛隊には世界第2位の予算がつき、隊員の士気も高いことも、自衛隊の実力を裏付けるポイントとなっている模様です。装備面でも、最新技術の導入は日本のお家芸でもあります。
自衛隊に入隊するには
自衛隊に入隊するには、高卒後に2等陸士・海士・空士に応募するのが王道コースです。入隊後、陸士は2年、海士・空士は3年を1期として勤務します。曹クラスの志望者は、高卒後に一般曹候補学生に応募し、約2年の教育を経て3等陸曹への昇進を目指します。
自衛隊といえば、防衛大学校、防衛医科大学校が人気です。入学即入隊となるので、学費0円で勉強しながら、学生手当が支給されますが、入試倍率は高めで狭き門となっています。
どの道、自衛隊に入隊するには、試験を突破しなければなりません。試験には、適性検査・面接・身体検査も含まれます。また、年齢制限もあって、たとえば自衛官候補生、一般曹候補生は18〜27歳までが応募資格となっています。
自衛隊の試験
自衛隊は近年の人気の高まりから、試験倍率は4〜5倍を超えることも珍しくありません。受験には年齢制限もあって、たとえば自衛隊幹部候補生は20〜26歳まで受験可能なのです。
自衛隊の幹部コースの登竜門として、防衛大学校、防衛医科大学校は超有名です。両校とも受験資格は高卒〜21歳で、試験は年々難化する傾向にあるようです。高等工科学校は、中卒〜17歳まで受験できます。
自衛隊の試験は、学力試験に加え、適性検査・面接もすべてパスする必要があります。身体検査も必須で、身長155cm以上(女子は150cm以上)、肺活量3000cc以上(女子は2400cc以上)、視力は裸眼で両眼とも0.6以上などの条件があって、筆記はパスしたのに身体検査ではねられたケースはままあることです。
自衛隊の給料はいったいいくらくらいなのか?
自衛隊の給料は、自衛官俸給表にしたがって支給されます。国家公務員ではありますが、独自の俸給表を使っています。平均給料は非公開ですが、人件費その他で計算して、月収はザっと40万円ほどと推定できます。
自衛隊は待遇面で学歴は関係なく、給料はシビアに俸給表によって決まり、年次昇給を利用してベースアップしていく仕組みです。例年、6月・12月には、賞与(ボーナス)が4.5ヶ月分ほど支給されるのも、国家公務員ならではの好待遇です。
自衛隊の気になる年収は、給料・ボーナスを合算して、陸海が300万円程度から、空が490万円程度からあります。平均的な年収は560万円〜680万円といったところで、年収1000万円以上の超エリートは本当に貴重な存在です。
自衛隊の階級について
自衛隊の階級は、ほぼ旧日本軍のシステムを言い換えとなっていて、軍隊との違いをアピールしています。兵にたいし士、下士官には曹、尉官には尉、佐官には佐といった具合です。
自衛隊は旧日本軍と違い、階級名は陸海空の区別もあります。たとえば、旧日本軍の二等兵にたいし、陸なら2等陸士、海なら2等海士、空なら2等空士と名称に違いがあります。
自衛隊の階級で、佐官の上の将官に相当するのが、将補・将で、陸の場合、陸将補(少将)・陸将(中将)・陸上幕僚長(大将)があり、海・空では「陸」の部分を入れ替えた呼び名を使います。陸上幕僚長は旧日本軍の大将に相当しますが、こちらは階級ではなく、あくまでもポスト名というのがミソです。
自衛隊の定年
自衛隊はなにより体が資本ということで、若年定年制を採用しています。将・将補で60歳、1佐で56歳、2佐・3佐で55歳などと、上の階級でも50代そこそこで定年を迎えてしまうのです。
自衛隊の士官は任期制となっていて、定年はありません。1期は陸士が2年、海士・空士が3年ですが、3任期めあたりから退官圧力がかかるようになるといいます。昇任試験に合格して、3等海曹などとして残留する方法はありますが、超高倍率で狭き門です。
したがって、自衛隊の定年には20代なかば・50代なかばの2つのピークが観察されます。退官後は、警備や運送業などに再就職する元自衛官は多く、強靭な身体と規律のとれた優秀な人材として、引く手あまたといいます。
自衛隊の不祥事
自衛隊は、不祥事が起こるたびにマスコミはこぞって大きく取り上げます。1988年の「なだしお事件」しかり、最近でも南スーダン派遣の日報が破棄されていなかったなど、もはや組織としての体質と化したかのようです。
自衛隊は、隊員個人が起こす不祥事もたびたび報じられています。出会い系サイトを通じての不適切な交際など、それでも氷山の一角なのかもしれません。
そもそも、自衛隊内部は陰湿なイジメやシゴキの温床となっているといい、不祥事が発生しやすい土壌があるようです。2017年には、元自衛官が警官を射殺した事件が起き、不祥事とは違いますが、加害者の前歴が国を守る仕事だっただけに、世間に与えたショックは大きかったようです。